2月の1冊目

 

遠い太鼓 (講談社文庫)

遠い太鼓 (講談社文庫)

 

 

初めての村上春樹作品は大学時代に読んだ「アフタダーク」。有名な作家だし、面白いに違いないと思いながら、読んでみたけど、正直、つまらなかった。つまらないというより、全然理解ができなかった。何かの学問書で理解できないならわかる。小説で理解できないってどういうことと思うのだけれども、本の内容が全く頭に入ってこない。目で文字を追っているだけの状態だった。以降、トラウマではないけれども、村上春樹さんの作品に対して少なからずの拒否をしていて、村上春樹さんの作品を手に取ることはしばらくなかった。

 

数年後、偶々本好きな後輩と好きな作家について話をしていたとき、上記のことを言ったら、初期の頃から読むといいですよと薦められ、何冊か初期の頃の村上春樹作品を貸してもらった。正直、そんなに面白いとは思わなかった。けれども、どこか惹かれる部分がある。ということで、順を追って、読んでみた。

 

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

 

はそれまでに読んだどの小説をもひっくり返すほどにインパクトがあり、感じたことがない衝撃を受けた。この作品をきっかけに一気に村上春樹にのめり込むこととなった。以降、長編小説はほとんど読んでいるが、何がいいのかを問われれば、明確には答えることはできない。何か得たいの知れない魅力があり、読まずにはいられない。けれども、立て続けには読めない。一作品を読んでいる間に激しく考える力を消耗し、読み終わったあとはその余韻に浸りたいので、結構な期間を置いてから次の作品を読むことにしている。ということで、騎士団長殺しはまだ読んでない。

 

1月に「色彩をもたない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読み終わったばかりではあるけれども、「遠い太鼓」は旅行記なので、読むことにした。

 

本の感想を書くたびに思うけれども、自分のボキャブラリーの無さにがっかりする。

「遠い太鼓」はシンプルに旅行記として面白い。その国に関すること、土地に関すること、そこで起きる日常の出来事、そこで暮らす人々についてをよくイメージできるし、ところどころで笑える部分もある。(村上春樹さんの作品で笑ったことは初めて)そこにまた村上春樹の一人という人間が垣間見えるところに若干感動する。当たり前だけど、実に人間らしい。ちなみに、遠い太鼓の中でもっとも印象的に残っているのは”はじめに”の部分である。この”はじめに”を飛ばして、いきなり中身に入ってしまうと、いささか物足りなさを感じる気がする。それぐらいに肝心な部分であると思う。

 

小説ではない村上春樹作品はなかなか踏み切れなかったけれども、これを機に読んでみようと思う。